そういえばまだ読んでいなかった友人の本

ここのところ、読書に充てられるはずの時間のほとんどを、授業準備のための広告関連の著作と、学界発表準備のための商品開発関連の論文と、そしてtwitterに奪われていて(笑)、...何人かの友人が出した本をなかなか読めずにいた。

そんな本の一冊、鈴木貴博さんが書いた 「会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?」朝日新聞出版)を、遅ればせながら夕食後の紅茶を飲みながら手にとってめくっているうちに引き込まれ、さっき読み終わったところである。

「その一枚で、30秒でも30分でも語れるのがよいチャート」とコンサルタント修行時代に誰かから教わったものだが、まさにそんな本。「所得弾力性」「価格弾力性」というわかった気になっていて、いささか古めかしく感じ、それゆえ今日的な課題ではあまり使おうと思いつかないモデル一本で、ここまで鋭く、かつ奥行きのある分析を展開されているのは見事である。

もちろん、「北米市場の自動車販売台数」と「実質経済成長率×自動車の短期所得弾力性」が一致するあたりも素敵だが、私が特に気に入ったのは、「短期/長期」×「価格弾力性が1より大きい/小さい」による「市場拡大の打ち手」の違いのフレームワーク
「長期的な価格弾力性が1よりも小さい」場合には、今日流行っている「低価格戦略礼賛ムード」に安易に従うのが必ずしも得策ではないことは、今日の経済ジャーナリズムでは見逃されがちな重要な指摘であろう。

本の題名が中身といまいち一致していなくて興味とともに誤解も喚起しそうな点は著者の趣味として、本の中身は今日的な状況に向き合うための骨太な示唆のある本といえよう。かなりお勧め。