そういえばad:tech tokyo

私の関心は、ここ7、8年の間に、「マーケティング・コミュニケーション」の領域から、「新規事業開発」や「企業再生」といったマーケティングと経営の間あたりの領域に大きくシフトしております。
そんなわけで、ad:techというイベントは、名前はもちろん何人もの方々から何回も聞いてはいたものの、そのタイトルゆえ、率直に申し上げると、あまり自分には関係がないイベントだと思っていました。
ところが、このたび日本で初の開催となるad:tech tokyo 2009のパネルディスカッションの一つで、縁あってパネリストをさせていただき、それがきっかけとなって慌てて勉強させていただき、その魅力を遅ればせながら発見しつつあるところです。

ad:tech tokyo 2009は、私は残念ながら初日(9月2日)はジョッシュ・バーノフ氏 (フォレスター・リサーチ) のキーノートの後、スケジュールの都合から参加することができませんでしたが、二日目(9月3日)は午前中はニック・レン氏 (CNNインターナショナル) のキーノートtokyo innovationジャシュ・ジェイムズ氏 (オムニチュア) のキーノート、午後は主として「ブランド担当者の本音」 「行動ターゲティング」 「データ シェア」 「マーケター タレントの育成」のパネルディスカッションを楽しむことができました。

いささかad:techのコアターゲットから外れたプロファイルであり、かつ、参加経験が限られているため、偏った感想になるかとは存じますが、以下感じたことをいくつか。

  • ad:techは「俯瞰」: マーケティング・コミュニケーションやメディアの今日的なトピックスと、それぞれのトピックスに関する主要な論点を、ほぼ漏れなく確認することができます。ちょうど、個々の領域の専門的な話にあまり突っ込まずに、経営に必要な領域すべての基本を習得するようデザインされているMBAプログラムのような感じです。それゆえ、より専門的に突っ込んだ深い話を聞きたいというドクタープログラム的な欲求は、いささか満たされない部分もあるかもしれません。
  • ad:techは「会話」: パネルディスカッションにおけるアドリブモードに入った会話、各セッションにおいて登壇者と聴衆の間のマイクもしくはtwitterを介した会話、そして、ブレイクやディナーの間に多様な参加者の間で交わされる会話ー語弊を恐れずに申し上げれば、個々のセッションでプレゼンテーションされる内容よりも、こういった会話の方がはるかに刺激的で、価値があります。
  • ad:techは「コミュニティ」: 前項の「会話」の話といささか重なりますが、たとえば開催前日のスピーカーのディナーは、ここ15年くらいの間で様々な形でご一緒させていただいた方々と一気に再会ができ、かつ、そういった方々からほぼワンホップで、以前から名前だけは伺っていながらまだお目にかかっていなかった方々ともつながることができる感覚はかなり素晴らしかったです。まさにコミュニティでした。あるいは、#adtechtokyo のタグで続いている会話は未だにホットで、「英語学習プロジェクト」「会社設立プロジェクト」など、次のad:tech tokyoまでに、具体的なプロジェクトが生まれそうな勢いですね。

ここまで書いたところで思い出したのが、私が1990年代中盤から後半に参加させていただいた、Richardが議長だった頃のTEDです。あの会議は、当初のコンセプトであったテクノロジー、エンターティンメント、デザインの三領域の融合を越え、人類の英知を取り扱うカンファレンスに発展していきましたが、あのときの「俯瞰」「会話」「コミュニティ」の感覚を、ad:tech tokyo 2009に参加していて久しぶりに思い出しました。
このような感覚を味わえるカンファレンスはなかなかないですね。ですから、ad:tech tokyoは是非継続し、発展していただきたいです。
さらに、もしad:tech tokyoに、インタラクティブマーケティングの「少し外」のテーマ、たとえば情報技術によるコミュニケーション領域以外のマーケティング戦略イノベーションのアイディア、といったテーマについても議題として扱っていただく余地がありますならば、私もささやかながら、できることがありましたら、貢献させていただきたいと考えております。

最後に、このような素晴らしい場を実現することにご尽力された主催者、協賛社、関係者、スピーカーの方々に賞賛と感謝の意を表明させていただきます。
パネルディスカッションをご一緒させていただいた方々、本音ベースの会話を楽しくさせていただきありがとうございました。
そして、強いパッションによりついにad:techの日本招聘を実現させ、ご多忙の中私にもお声がけをいただいてad:techコミュニティに参加させていただくきっかけをいただきました武富様、本当にありがとうございました。