そういえば異業種競争戦略

内田和成さんの「異業種競争戦略」を読んだ。

内田さんの本は、「仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法」を読んだときにも感じたのだが、今日的な現場で戦略コンサルティングの実務に携わっている人々のリアルな「頭の動かし方」を、不要な専門用語や派手なフレームワークを極力使わずに、きわめてわかりやすく説明している。こういうきわめてわかりやすい説明は、MBA修了者や短期間の戦略コンサルティング会社勤務経験者が書いている、自分が得た知識をそれらしく振り回してみた体験談の域を出ない「MBA的なフレームワークを紹介する経営戦略本」では見られないものであり、豊富なプロジェクトの経験を通じて「本質」を深くご理解されているからこそできる技であろう。さすが。

今回の「異業種競争戦略」は、早稲田大学の社会人向けMBAの名物授業(2005年当時は「市場競争戦略」という名前だったはず)のエッセンスが余すところなく紹介されており、従来型の経営戦略論が見逃しがちな「代替」が頻繁に起こる今日的な事業環境において、いかに考え、いかに行動すべきかについて、骨太で具体的な示唆が提示されている。

個人的には(本著の中では多くの方々にとって中核的なメッセージではないだろうが)第7章の「パラダイム・シフターを見逃さない」の中の、「パラダイム・シフター」と「ゴッド・ファーザー」の連携モデルの提案の部分が、私がここのところ現場で接しているクライアント企業の課題解決の「成功パターン」に近くて、特に興味深かった。

今日的な経営戦略の課題に直面し、その解決に取り組もうとされている方々は、あまたある「MBA的なフレームワークを紹介する経営戦略本」よりも前に、まず本質をきちんとつかむために、本著を読まれることを強くお奨めする。

p.s.「あの名物授業の内容をここまで本にしてしまって、内田先生、来年度以後の授業困らないのだろうか?」なんて、今年から始まった大学の授業の準備で毎週末忙殺され、来年から今年よりはちょっと楽をさせていただこうと思っている者として、つい心配してしまう今日この頃。あ、こういう発想をしていると「どこかから弾が飛んでくる」んでしょうね。いけないいけない。