そういえばTED

twitterで@kumifujisawaさんがTEDに参加している様子を見ていて、懐かしくなり、行きたくなっている。
そういえばTED5に参加した今から15年前、「いつかあのステージの上に立つぞ」と心に決めたものだったが...近づいているのか、遠のいているのか...う〜む。
それはともかく、そんなTED懐かしいモードの中で、昔私があるメディアにTEDを紹介した文章を見つけたので、以下再掲させていただく。

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1995年5月29日
未来のコミュニケーションを探る 〜国際会議「TED 6」に参加して

自由に情報を交換
 「いわゆるマルチメディアについてバカ騒ぎとしかいいようのない議論はもうやめよう。我々にとってそれは何であり、なぜ必要で、何をもたらすか?それは我々のコミュケーションを良くするのか?」と、TED 5のオープニングで、この会議の議長リチャード・ソール・ワーマン氏が問題提起してからちょうど一年。シリコンバレーに近い海のリゾート地カリフォルニア州モントレーで、二月二十二日から二十五日までTED 6は開催された。
 TEDは、最先端のコミュニケーションの分野で融合が起きている、テクノロジー(T)、エンターティンメント(E)、デザイン(D)の三つの分野からコミュニケーションについて論じる会議である。一九八四年の第一回以来、マッキントッシュやバーチャル・リアリティ、エージェントといった今日のマルチメディア時代を先駆けるコンセプトやテクノロジーがいち早く紹介される舞台となってきた。
 マルチメディアをリードする企業のCEOクラスや開発者、著名な業績を持つ学者や作家、最先端で活躍するクリエーターやデザイナー、出版、放送、広告などコミュニケーション産業に携わる人びとが集まり、講演者も参加者も、一流企業のCEOもノーベル賞学者もハイテクヒッピーも関係なく、だれとでも自由に情報や意見を交換できる会議である。


多岐にわたるテーマ
 TED 6においては、多岐にわたるユニークなテーマのスピーチと議論が展開された。
 例えば、米国の物理学会の大御所MITのフィリップ・モリソン教授は「これまでの人類の歴史を十万年前以前、十万年前から一万年前までの間、一万年前から現在までと分けると、現在我々はその次の時代への驚くべき転換点にいる。これまでの歴史の中で増え続けた人口がこの十年の間に平準化し、人々のコミュニケーションのツールやテクノロジーも変わるであろう」と語った。
 かつてバーチャル・リアリティで注目されたジャロン・ラニアー氏やエレクトロニック・フロンティア財団のジョン・ペリー・バーロー氏は、来るべきデジタル時代の社会や文化のビジョンを語り、新たな「憲法」や政策、権利、インフラストラクチャーの整備を訴えた。
 新しい時代を傍観して待つのではなく、今日できることから具体的に取り組みを始めている人々も紹介された。
 TED 6のオープニングで、スクリーンいっぱいに圧倒的なリアリティと美しさの人体の頭部のCGを上映したメタラ社のアレクサンダー・ツィアラス氏は、CT、MRIのスキャンデータを「五次元のリアリティ」で表現する彼の開発したテクノロジーを実際に二歳の女の子の脳外科の難手術の支援に使用し、成功したケースを紹介した。
 大のコンピューター嫌いを自認する米国を代表する建築課フランク・ゲーリー氏は、自分の独創的な建築のアイディアが、コンピューターを使うことでよりよく反映できるようになったとのこと。
 デジタルメディアが夢物語から実用化の段階に移行していることが印象的であった。


情報流通革命の時代
 TED 6で注目を集めたのはやはりインターネット。アドビ・システムズ社会長のジョン・ワーノック博士は「DTP(デスクトップ・パブリッシング)は情報創造の革命だったが、今インターネットにおいて進行しているのは情報流通の革命。DTPとは比べものにならない大きな経済効果をもたらす」と語った。
 未来研究所のポール・サッフォー氏は、印刷メディアが電子メディアに移行する間の混乱と再編成の動きを「メディアギャップ」と名付け、MITメディアラボ所長のニコラス・ネグロポンテ教授は「インターネットは二千年までに十億人が利用するだろう」と予測した。
 「デジタル革命」をリードする雑誌『ワイヤード』のルイス・ロセット編集長は自らの出版活動を「情報のコンテクストを提供し、それを共有するコミュニティを創ること」と語り、それをさらに進めるために昨年末からインターネット上で始めた「ホットワイヤード」を紹介した。
 現実にメディアとして機能を始めたインターネットがコミュニケーションに革命をもたらしつつあることが、多くのスピーチから感じられた。


ルーツを肌で感じる
 TED 6に参加して、参加者が共有している「ルーツ」を改めて体感し、再認識した。
 それは、コミュニケーションや人間、社会の本質を自分の出来ること、すべきことの中で考えようという姿勢と、自分たち自身の手で選択し、創りだしていこうという意志である。
 マルチメディアのスターと言われる人びととTEDで語ると、おなじみのビジネスストーリーからは見えてこないこの「ルーツ」を肌で感じる。
 この「ルーツ」を共有する人々のネットワークと、そこにおけるコラボレーションこそが、人々を幸せにするコミュニケーションの未来を拓くのではないか。
 TED 6に参加しながらそんなことを感じた。