「資本=ネーション=国家」

柄谷 (2010) は、現在の資本主義国家を動かしていると考えている「資本=ネーション=国家」という「三位一体のシステム」を描き、さらに、そのシステムでは解決できない問題を解決するための新たなアプローチを提案している。
それでは、まず、「資本=ネーション=国家」とはどのようなシステムなのだろうか?

「先ず資本主義経済が存在する。だが、それは放置すれば、必ず経済的格差と階級対立に帰結してしまう。それに対して、ネーションは共同性と平等性を志向する観点から、資本性経済がもたらす諸矛盾の解決を要求する。そして、国家は課税と再分配や諸規制によって、その課題を果たす。資本もネーションも国家も異なるものであり、それぞれ異なる原理に根ざしているのだが、ここでは、それらが補うように接合されている。それらは、どの一つを欠いても成立しないボロメオの環である。」〔柄谷 (2010) 3p〕

この文章の中で、一般的によく使われている「資本主義経済」「国家」といった概念とは異なり、いささか唐突に登場するのが「ネーション」という概念である。これは何を指しているのだろうか?